
学習塾のWebマーケティング!Web集客の戦略を考えるための3つの数字

- ホームページはあるけれど、そこから何件問い合わせが来ているのか分からない
- Instagramを更新しているが、入塾につながっているのか分からない
- 以前は口コミや紹介だけで生徒が集まっていたが、最近は新規が難しくなってきた
そして多くの場合、次に出てくるのは「だから集客を強化したい」という言葉です。
ただ、ここで一度立ち止まりたいところがあります。
「集客が足りない」と言うとき、いったい何人足りないのでしょうか。
この質問に数字で答えられる塾は、意外と多くありません。
そして人数が分からないままだと、Google広告を出すべきなのか、Instagramを毎日更新すべきなのか、ホームページを作り直すべきなのかも、判断できないままになります。
この記事では、架空の地域密着型学習塾「さくら進学塾」を例に、まず塾の数字を分解し、そこから逆算してWebマーケティングの打ち手を決める、という順番で考えてみます。
目次
学習塾業界で起きていること
まず、業界の状況を確認しておきましょう。
帝国データバンクの調査によると、2025年に発生した学習塾の倒産は46件で、前年の40件を上回り過去最多を更新しました。約9割が資本金1,000万円未満の小規模経営でしたが、中堅規模の塾にも淘汰が及んでいます。
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集計基準の異なる東京商工リサーチの調査でも、2025年の学習塾倒産は55件で過去最多。原因別では「販売不振」が45件と全体の81.8%を占めました。
株式会社東京商工リサーチ


2025年の「学習塾」倒産 過去最多の55件 少子化と物価高の中、小規模な学習塾が苦戦 | TSRデータインサイ…
2025年に発生した「学習塾」の倒産が55件(前年比3.7%増)で、2006年以降で最多だった2024年の53件を上回り、過去最多を更新した。
ここで注目したいのは、経営環境の変化の中身です。同じく帝国データバンクは、次のように指摘しています。
生徒募集の面でも、従来の折込チラシによる募集からSNS運用やリスティング広告などデジタル化への移行が必須となり、生徒1人を獲得するための費用も「数年前の2倍まで跳ね上がった」という声が聞かれ、「看板を掲げれば生徒が集まる」ビジネスモデルが通用しづらくなっている
つまり、生徒獲得コストが上がっているということです。
さらに、業績面では二極化が進んでいます。2024年度の業績を見ると、売上50億円以上の大手塾では減益を含め9割超が黒字を確保した一方、売上5億円未満の中小塾では約4割が赤字となりました。
一方で、塾への需要そのものが消えたわけではありません。
文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」によると、学習塾費を年間で支出した家庭の割合は、公立中学校で約7割。そして学習塾費を支出している家庭に限った年間の平均額は、公立中学校で約34万9千円です。
7割の家庭が通わせていて、通わせている家庭は年間約35万円を支払っている。
需要は十分にあります。減っているのは子どもの数と、「なんとなく近いから」で選ばれる余地のほうです。
この環境で中小の塾に必要なのは、やみくもに露出を増やすことではありません。
限られた数の家庭に、確実に選ばれることです。
そのためには、まず「何人に選ばれる必要があるのか」を知る必要があります。
今回、想定する架空の学習塾「さくら進学塾」
具体例として、次のような学習塾を想定します。(※「さくら進学塾」に関する情報・データは全て架空です)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 塾名 | さくら進学塾 |
| 所在地 | 埼玉県内の住宅地 |
| 教室数 | 1教室 |
| 従業員 | 正社員3名+アルバイト講師6名 |
| 生徒数 | 約80名(小学5年生〜中学3年生の5学年) |
| 平均月謝 | 約2万5,000円(小学生2万円/中学生3万円) |
| 季節講習・教材費 | 年間平均約10万円 |
| 年間の生徒単価 | 約40万円 |
| 年商 | 約3,200万円 |
| 主力 | 中学生の高校受験・定期テスト対策 |
| 商圏 | 教室から3〜5km程度 |
| Web担当者 | なし。塾長が兼任 |
| Webサイト | 6年前に制作 |
| SNS | Instagramを月1〜2回更新 |
| Googleマップ | 登録済みだがほぼ更新していない |
| Web広告 | 過去に実施したが現在は停止 |
| 主な集客 | 口コミ、兄弟紹介、チラシ、Web検索 |
さくら進学塾は、指導力が低い塾ではありません。地域の学校事情にも詳しく、既存の保護者からの評判も悪くありません。
しかし新規生徒の多くを紹介と口コミに頼っていて、ホームページにはコース、月謝、アクセス、塾長挨拶、問い合わせフォーム程度しか載っていません。
「地域密着」「一人ひとりに寄り添った指導」とは書いてあります。
ただ、それだけでは近隣の塾との違いが分かりません。

必要な問い合わせ数を計算する
生徒1人は、いくらの売上になるのか
最初に計算したいのが、入塾者1人がもたらす売上の総額です。
さくら進学塾に、中学2年生の4月に入塾した生徒がいるとします。中学3年生の3月まで通うと、在籍は24か月です。
- 月謝:3万円 × 24か月 = 72万円
- 季節講習・教材費・模試代:年間12万円 × 2年 = 24万円
- 入塾金:2万円
合計すると、約98万円になります。
「うちの塾の料金設定は少し高いのでは」と感じる場合は、全国平均で見ることもできます。先ほどの文部科学省の調査(前掲「令和5年度子供の学習費調査」)では、公立中学生で学習塾費を支出している家庭の平均は年間約34万9千円でした。2年間なら約70万円です。
つまり、月謝の設定にもよりますが、中学生が2年間通えば、1人あたり70万円から100万円程度の売上になります。
ここから人件費、家賃、光熱費などを引いた貢献利益を仮に40%とすると、1人あたり30万円前後が残る計算です。
この数字を頭に置いたうえで、もう一度こう考えてみてください。この1人を獲得するために、いくらまでなら使えるでしょうか。
多くの塾は、広告を検討したときに「問い合わせ1件あたり5,000円」「1万円」といった数字を見て、高いと判断して止めてしまいます。
しかし、問い合わせ1件が1万円かかったとしても、その1件から入塾に至る確率が5割なら、入塾1人あたりの獲得費用は2万円です。
70万円から100万円の売上に対して、2万円。
冒頭で紹介した「生徒1人あたりの獲得費用が数年前の2倍になった」という指摘も、この数字を持っていれば冷静に判断できます。2倍になってもまだ十分に合う水準なのか、それとも本当に合わないのか。
1人あたりの売上を知らないまま、獲得コストの高い安いは判断できません。
現状維持のために、年間何人必要なのか
次に計算するのが、毎年自動的に減る人数です。
学習塾には、他の業種にない特徴があります。満足度が高くても、生徒は必ずいなくなるという点です。
さくら進学塾は小学5年生から中学3年生までの5学年、生徒80名。単純化すると各学年16名です。中学3年生は毎年卒塾します。これで16名、全体の20%が自動的に抜けます。
さらに、転居、部活との両立、成績への不満、他塾への移籍などによる中途退塾があります。仮に年10%とすると8名です。
合計すると、年間24名が抜けていく計算になります。
つまり、さくら進学塾が生徒数80名を維持するためには、指導内容に何の問題がなくても、年間24名、月におよそ2名の新規入塾が必要ということです。
そして生徒数を100名まで増やしたいなら、24名+20名で年間44名。月におよそ3.7名です。
ここが重要なところです。
「集客を強化したい」という漠然とした課題が、「月2名の入塾を、月3.7名にする」という、極めて具体的な目標に変わりました。
そこから逆算すると、必要な問い合わせ数が出る
最後に、入塾数から遡って必要な問い合わせ数を出します。
学習塾では、体験授業や面談まで来た家庭の入塾率は比較的高くなります。ここでは次のように仮定します。
- 問い合わせ → 体験授業に参加:80%
- 体験授業 → 入塾:60%
この場合、入塾1名を得るために必要な問い合わせは約2.1件です。
| 目標 | 年間入塾 | 必要な体験授業 | 必要な問い合わせ | 月あたり問い合わせ |
|---|---|---|---|---|
| 現状維持(80名) | 24名 | 40名 | 50件 | 約4件 |
| 100名まで増やす | 44名 | 74名 | 92件 | 約8件 |
結論はこうなります。
さくら進学塾がやるべきことは、月4件の問い合わせを月8件にすることです。
いまよりも月に4件、問い合わせ数を増やす。Instagramを毎日更新することでも、ホームページを全面リニューアルすることでも、TikTokを始めることでもありません。月に4件です。
この規模感が分かっていると、施策の選び方が変わります。
たとえばGoogleビジネスプロフィールを整備して地域検索からの流入が月20件増え、そのうち5%が問い合わせにつながれば、それだけで月1件です。料金ページに総額の目安を明記して問い合わせのハードルを下げれば、また1件。合格実績と講師紹介を追加して比較検討で負けなくなれば、また1件。
月4件は、大がかりな施策を打たなくても届く数字です。
逆に、この数字を持たないまま「集客が足りない」と考えていると、常に足りない気がして、施策を増やし続けることになります。人員の限られた地域塾では、これが一番消耗します。
保護者は何を不安に思っているのか
数字が決まったら、次は「誰に、何を伝えるか」です。
さくら進学塾では、次のような保護者を中心に想定します。

田中美香さん(仮名)/43歳/会社員
- 夫と中学2年生の息子、小学生の娘の4人家族
- 自宅から自転車で通える塾を探している
- 息子の成績は学年で中程度、特に数学と英語に不安がある
- 部活動が忙しい
- 高校受験が少しずつ気になり始めている
- 大手塾も検討している
- 月謝だけでなく追加費用も気になる
- スマートフォンで塾を検索し、Googleマップや口コミも確認する
- 最終的には本人との相性を見て決めたい
田中さんが探しているのは、単純に「偏差値の高い塾」ではありません。
頭にあるのは、こうした疑問です。
- うちの子でも授業についていけるだろうか
- 部活と両立できるだろうか
- 先生はちゃんと見てくれるだろうか
- 結局、年間でいくらかかるのだろう
- 合わなかったら、やめられるのだろうか
Webサイトの役割は、この一つひとつに先回りして答えることです。
そして注意したいのが、最後の「やめられるのだろうか」です。
保護者にとって塾は、決して安い買い物ではありません。年間30万円以上を払う判断をするとき、「合わなかったときにどうなるか」が分からないと、申し込みのハードルは上がります。
入塾までの流れと、詰まっている場所の見つけ方
塾を探し始めてから入塾するまでの流れを整理すると、次のようになります。
| 段階 | 保護者の状態 | 主な行動 | 必要なWeb施策 |
|---|---|---|---|
| 課題認識 | 成績が下がってきた | 家族で相談 | 教育情報コンテンツ |
| 情報収集 | 塾を探し始める | Google検索、Googleマップ | 地域SEO、MEO |
| 比較 | 3〜5塾を見る | サイト・口コミ確認 | コース、料金、実績 |
| 信頼確認 | 候補を絞る | 講師・教室を見る | 講師紹介、写真、事例 |
| 行動 | 一度見てみたい | 体験授業を申し込む | 体験ページ、FAQ |
| 体験 | 子どもと来塾 | 授業・面談 | 教室での体験 |
| 入塾 | 最終判断 | 家族で相談 | 面談、料金説明 |
| 継続・紹介 | 満足している | 口コミ・紹介 | Google口コミ |
ここで確認したいのは、自分の塾はどこで詰まっているのかです。
分解3で出した数字を実際の数字と突き合わせると、詰まっている場所が特定できます。
| 詰まっている場所 | 症状 | 打つべき手 |
|---|---|---|
| 認知 | そもそもサイトに人が来ていない | MEO、地域SEO、指名検索の確認 |
| 比較 | 訪問はあるが問い合わせにならない | 料金、実績、講師情報、FAQの整備 |
| 体験申込 | 問い合わせはあるが体験に来ない | フォームの簡素化、返信の速さ |
| 入塾 | 体験には来るが入塾しない | 面談内容、料金説明、フォロー |
たとえば、月間のサイト訪問が600、問い合わせが4件、体験参加が3件、入塾が2名だとします。
このとき問い合わせから体験への転換は75%、体験から入塾は67%。ここは悪くありません。詰まっているのは訪問から問い合わせの部分です。
この場合、広告を出して訪問数を増やしても、同じ割合で漏れ続けます。先に直すべきはサイトの中身です。
どこが詰まっているか分からないまま施策を足すと、漏れているバケツに水を注ぐことになります。
さくら進学塾のWeb集客戦略

優先度A:まず「受け皿」を整える
ここからは打ち手です。優先度Aは、問い合わせを受ける場所そのものの整備です。
学習塾のホームページでよくある問題は、塾側が伝えたいことばかり載っていることです。
「地域密着」「熱心な指導」「一人ひとりに寄り添います」
大切な理念ですが、保護者が知りたいのはもっと具体的な情報です。
- どんな生徒に向いているのか
- 授業は何人で行うのか
- どんな先生が教えるのか
- 成績が伸びない場合はどうするのか
- 宿題はどれくらいあるのか
- 部活動と両立できるのか
- 自習室は使えるのか
- 欠席したらどうなるのか
- 月謝以外に何がかかるのか
- 対応している中学校はどこか
これらに答えるページを作ります。
そのうえで、「人」と「実績」を見せます。
学習塾は、入塾するまでサービスの品質を判断できません。だからこそ、誰がどう教えているのかを見せることが信頼につながります。塾長紹介、講師紹介、授業風景、教室写真、合格実績、成績アップ事例、保護者の声などです。
特に成績アップ事例は、結果だけでなくプロセスまで見せると具体性が増します。
中学2年生・数学62点 → 苦手分野を分析 → 週2回の授業+テスト前の補習 → 3か月後の定期テストで82点
このように書くと、「何をしてくれる塾なのか」が伝わります。
料金ページで避けて通れない、特定商取引法の話
料金ページを作るときに、学習塾には確認しておきたい法律があります。
学習塾は、特定商取引法の「特定継続的役務提供」に指定されている7業種のひとつです。契約期間が2か月を超え、契約金額の総額が5万円を超える場合に対象となります。この金額には授業料の総額だけでなく、入会金、施設利用料、教材費なども含まれます。
対象になる場合、事業者には次の義務が生じます。
- 契約前に「概要書面」、契約後に「契約書面」を交付すること
- 書面を受け取った日から8日以内のクーリング・オフに応じること
- クーリング・オフ期間経過後も、中途解約に応じること
中途解約時に請求できる違約金にも上限があります。役務提供開始前は1万1,000円、開始後は「2万円」または「契約における1か月分の授業料相当額」のいずれか低い額が上限です。
そして概要書面・契約書面を交付しなかった場合や、法定記載事項を満たさない書面・虚偽の記載がある書面を交付した場合には、6か月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が科されます。なお「拘禁刑」という聞き慣れない言葉が出てきますが、これは2025年6月の刑法改正で従来の「懲役」と「禁錮」が一本化されたものです。古い解説記事では「懲役」と書かれていることがあります。
なお、該当するかどうかの分かれ目は「契約期間が2か月を超えるかどうか」です。1か月ごとの月謝制で、いつでも違約金なく退塾できる形であれば該当しないと整理されることが多い一方、年間コースや一括前払い、年間分の教材購入がある場合は該当しうると考えられます。自塾の契約形態がどちらにあたるかは、弁護士など専門家にご確認ください。
特定商取引法ガイド
特定継続的役務提供|特定商取引法ガイド
特定商取引法は、消費者トラブルを生じやすい特定の取引類型を対象に、トラブル防止のルールを定め、事業者による不公正な勧誘行為を取り締まることにより、消費者取引の公…
ただ、ここでお伝えしたいのは、法律の細かい話そのものではありません。
この法律が求めていることと、保護者が知りたいことは、ほぼ同じだということです。
総額はいくらか。何が追加でかかるのか。合わなかったらどうなるのか。これらをWebサイトの料金ページとFAQに正直に書いておくことは、法令対応であると同時に、比較検討されたときの信頼材料になります。
料金を載せていない塾は少なくありません。だからこそ、載せるだけで差がつきます。
合格実績の見せ方には注意点もあります
合格実績は強力な材料ですが、書き方には注意が必要です。
- 延べ人数と実人数を区別する:講習だけ受講した生徒を実績に含めると、実態と離れます
- 母数を示す:「〇〇高校5名合格」より「受験者7名中5名合格」のほうが誠実で、かつ伝わります
- 掲載には同意を得る:生徒の写真、氏名、点数を載せる場合は本人と保護者の同意が必要です
- 断定的な表現を避ける:「必ず成績が上がる」といった表現は、景品表示法上の優良誤認と受け取られる可能性があります
実際より良く見せた実績で入塾してもらっても、続きません。中途解約や退塾につながれば、分解1で計算した1人あたりの売上は途中で途切れます。
誠実に書くことが、結果として数字にも合っています。
優先度B:地域で見つけてもらう
受け皿が整ったら、見つけてもらう施策に進みます。
学習塾は商圏が狭いビジネスです。そのため、SEOとMEO(Googleマップなどの地域検索対策)との相性が良い業種です。
狙うのは、こうしたキーワードです。
ここで注意したいのが、SEO=ブログを書くこと、ではないという点です。
まず、中学生コース、高校受験対策、定期テスト対策、料金、合格実績、対応中学校、FAQといった基本ページを充実させます。記事コンテンツはそのあとです。
記事を書く場合も、全国の中学生を対象にする必要はありません。地域塾だからこそ書ける情報があります。
- ○○高校の入試傾向と対策
- ○○中学校の定期テスト対策
- 埼玉県公立高校入試の仕組み
- 中学2年生から始める高校受験対策
- 個別指導と集団指導はどちらがいいのか
- 塾選びで確認しておきたいポイント
大切なのは、記事を書いて終わりにしないことです。
「○○高校の入試対策」で検索 → 解説記事 → 高校受験コース → 合格実績 → 無料体験授業
この導線をつなぐことが、SEOを入塾につなげる考え方です。
そしてGoogleビジネスプロフィールの整備も重要です。基本情報、営業時間、教室写真、外観、授業風景、最新情報を揃えます。可能であれば保護者から口コミを集めます。
ここで、紹介中心の塾ほど見落としがちな導線があります。
知人から「さくら進学塾いいよ」と聞いた保護者は、そのまま問い合わせるとは限りません。多くの場合、まずスマートフォンで「さくら進学塾」と検索します。
口コミ・紹介 → 指名検索 → Googleマップ・Webサイト → 確認 → 体験授業
つまり、Webサイトは新規獲得のためだけのものではなく、紹介を受け止める場所でもあります。紹介が多い塾ほど、サイトを整備する意味があります。
優先度C:広告、SNS、そしてAI検索
ここまで整えたうえで、必要に応じて広告やSNSを検討します。
広告は、春期講習、夏期講習、冬期講習、新学期、受験学年への進級など、需要が高まるタイミングで有効です。ただし、料金も実績も講師情報もほとんどないサイトに広告を流しても、比較されたときに負けます。順番としては受け皿が先です。
そして広告を出すなら、判断基準は「問い合わせ1件いくらか」ではなく、「入塾者1人あたりいくらかかったか」です。分解1で計算した1人あたりの売上と並べて初めて、続けるべきか止めるべきかが判断できます。
SNSは、無理に毎日更新する必要はありません。さくら進学塾の場合、役割は「塾の雰囲気や人柄を伝える補助的な場所」で十分です。検索や口コミで塾を知った保護者がInstagramを見て「ちゃんと運営されている塾なんだな」と安心できれば、役割は果たしています。フォロワー数をKPIにする必要はありません。
そして近年、無視できなくなってきているのがAI検索です。
サイバーエージェント GEOラボの調査によると、検索行動の際に生成AIを利用すると回答したユーザーは、2025年5月の21.3%から2026年2月には37.0%に増加しました。特に50代(+7.7ポイント)、40代(+6.7ポイント)の伸びが大きく、若年層だけの現象ではなくなっています。
40代・50代というのは、まさに中学生の保護者の世代です。
株式会社サイバーエージェント


サイバーエージェント GEOラボ、生成AIのユーザー利用実態調査 第三弾を実施 検索行動の「生成AIシフト」…
サイバーエージェントの新たな取り組みやサービス情報など、当社のニュースリリースを掲載しています。
「○○市で中学生におすすめの塾を教えて」とAIに尋ねる保護者が、今後増えていくと考えたほうがよいでしょう。
AI検索に取り上げられやすくするための対策は、実はここまで書いてきたことと大きく変わりません。
- 料金、コース、対応校、講師情報が具体的に書かれている
- 質問と回答の形(FAQ)で情報が整理されている
- 塾名、所在地、対応エリアが明記されている
- Googleビジネスプロフィールの情報が最新
AIが参照するのは、構造が整理された具体的な情報です。保護者にとって分かりやすいサイトは、AIにとっても読み取りやすいサイトになります。特別な対策を先に考えるより、基本ページの充実を優先するほうが確実です。
AIは、Web担当者の代わりに使う
Web担当者がいない塾では、生成AIそのものも実務で役に立ちます。
- ブログ記事の構成案づくり
- 保護者から寄せられる質問の洗い出しとFAQ化
- Instagram投稿案の作成
- 競合塾サイトの比較項目の整理
- アクセス解析結果の読み解き
ただし、AIが作った文章をそのまま掲載するのはおすすめしません。
地域の学校事情、実際の指導経験、その塾でしか語れない事例。これらを加えて初めて、他塾と違うコンテンツになります。
そして入試制度や学校情報については、必ず最新の公式情報を確認してください。AIの回答は古い情報を含んでいることがあります。
やらなくていいことを決める
人員の限られた地域塾では、施策を増やしすぎることも問題です。
分解3で確認したとおり、さくら進学塾に必要なのは月4件の問い合わせ増です。この目標に対して、次のようなことは最初から行う必要はありません。
- Instagramを毎日更新する
- TikTokを始める
- 毎週ブログを書く
- 全国向けのSEOを行う
- YouTubeを本格運用する
- 高額なマーケティングツールを導入する
- Webサイトを全面リニューアルする
- 多額の広告費を投入する
重要なのは、「何をやるか」だけではなく、「何をやらないか」を決めることです。
数字が分かっていれば、これを決められます。
さくら進学塾が6か月間取り組むなら
具体的なロードマップにすると、次のようになります。
1か月目:数字を出す
GA4、Search Console、Googleビジネスプロフィールを確認し、新規入塾者に塾を知ったきっかけを聞きます。そのうえで分解1から3を実際に計算します。ここで「詰まっている場所」を特定します。
2か月目:受け皿を整える
中学生コース、高校受験コース、料金ページ、無料体験ページを改善します。料金は総額と追加費用まで明記します。FAQを追加し、契約と解約に関する説明も整理します。
3か月目:信頼材料を増やす
塾長紹介、講師紹介、合格実績、成績アップ事例、保護者と生徒の声、授業風景、教室写真を追加します。比較されたときに選ばれる材料を揃えます。
4か月目:地域で見つけてもらう
Googleビジネスプロフィールを整備し、地域キーワード対策、対応中学校ページ、高校受験関連ページを追加します。口コミの依頼も始めます。
5か月目:発信を続ける
Instagram、入試情報、定期テスト情報、ブログ、Googleビジネスプロフィールの投稿を、無理のない範囲で継続します。
6か月目:検証する
数字を確認します。ここで見るのは、次の流れです。
サイト訪問数 → 問い合わせ数 → 体験申込数 → 体験参加数 → 入塾数 → 入塾者1人あたりの獲得費用
1か月目に出した数字と比べて、どこが改善し、どこが変わらなかったのかを確認します。必要であれば、このタイミングで広告を検討します。
毎月見るのは、PVでもフォロワー数でもありません。問い合わせ件数、体験参加数、入塾数の3つです。この3つを毎月記録するだけで、翌年の判断精度がまったく変わります。
学習塾のWebマーケティングは、算数からはじめよう
学習塾のWebマーケティングというと、「SEOを強化しよう」「Instagramを始めよう」「Google広告を出そう」と考えがちです。
しかし、本当に重要なのはその前です。
- 生徒1人は、いくらの売上になるのか。
- 現状維持のために、年間何人必要なのか。
- そのために、月何件の問い合わせが必要なのか。
この3つを出すと、「集客が足りない」という漠然とした課題が、「月4件を月8件にする」という具体的な目標に変わります。
そして目標が具体的になると、やるべきことも、やらなくていいことも決まります。
SEO、MEO、SNS、口コミ、広告は、それぞれ独立した施策ではありません。見込み客が塾を知ってから入塾するまでの流れをつなぐための手段です。
Web担当者がいない小さな学習塾でも、すべてを一度に行う必要はありません。
まず数字を出す。詰まっている場所を特定する。そこだけ直す。
この順番で一つずつ進めていくことが、地域の学習塾にとって取り組みやすいWebマーケティングの基本形です。
本記事の数値と出典について
本記事に登場する「さくら進学塾」は、記事の趣旨を分かりやすく伝えるために設定した架空の学習塾です。生徒数、月謝、退塾率、転換率などの数値は、公開データをもとにした試算であり、実在の塾の業績を示すものではありません。
引用したデータの出典は、それぞれ該当するセクション内に記載しています。数値は調査時点のものです。最新の情報は各機関の公表資料をご確認ください。


